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自走式土質改良機(リテラ)による
   農業用ため池堆積土の有効利用について

・湖床堆積土について
 昨今、残土の再生利用が注目され、中でも農業用ため池における
 湖床有機土等の処分については、これからの土壌再生利用にとって
 大きな問題であると考えられる。
 そこで本計画では、福岡県京築地区一沿における農業用ため池に
 永年に渡り堆積された有機土・粘性質土の除去及び蘇生利用について、
 また現況鞘土・刃金土についても夫々の目的用途に合った土質に
 蘇生利用できるよう行った工法検討並びに施工要領について
 記載するものである。
 又、今回の工法検討については、土質調査のためサンプリングした
 福岡県京都郡(深田大池工事)の堆積土及び鞘土・刃金土のデータを
 基に目的用途別に分類して工法検討を行うこととする。
土質試験結果報告書 未処理土の特性値
               
  土粒子の密度 含水比 粒度組成 (%) コーン指数
土質 ps         qc
  (g/cm3  (%) 礫分 砂分 シルト分 粘土分 (kN/m2 
湖床堆積土 2.575 164.9 0 7.1 72.3 20.6 127
鞘土・刃金土 2.667 32.7 4.9 22.8 48.0  24.3 284
砂質土 2.663 8.2 37.4 51.0  5.6 6.0  1,200 
(まさ土)             以上

 ◆土質試験用収集土 サンプリング箇所

 ◆土質試験用収集土 サンプリング箇所断面図
 

1) 湖床堆積土について
      今回行った上記の土質試験結果によると、含水比はW≒165%と高含水比を示し、
      粒度分布は細粒度(0.075mm以下)主体の粘性土に分類され、所謂 ”潟土(超軟弱粘土)”と
      称される土質である。
      土の施工性(トラフカビリティ)の最も影響を及ぼすコーン指数qcも127KN/m2(1.30kgf/cm2)と
      超湿地ブルドーザでの施工も容易に行えない、不良な土質である。
      これらの条件下において盛土材料として使用するには安定処理による改良、
      若しくは含水比抑制等の処置を行わなければ使用不可能なものである。

@仮設道路及び背面盛土への流用
      ”潟土(超軟弱土)”は、ダンプトラック運搬が不可能であり、何らかの改良を加えて搬出するのが
      従来工法であった。
      今回行った配合試験結果によると、湖床堆積土と真砂土を6:4の割合で混合し、これに固化材50kg/m3
      を添加することにより含水比を48%程度まで抑制する事が可能であり、一軸圧縮強度については、
      qu=70.4KN/m2(0.718kgf/cm2)までの土質改善が可能である。
      qu=0.225CBRの関係式よりCBRを求めると、CBR≒3.2%確保できることになる。
      配合量を増すより、強度は当然大きい値を得ることができる。
      以上のことにより、湖床堆積土等の現場内使用用途としては、仮設道路の築堤及び直接水域の影響を
      受けない背面盛土等に適用できるものと考えられ、併せて、他の現場への持ち出しについても
      容易に行えるものと考えられる。
      以下、施工要領図・用途別工種表を参照

 ◆施工要領図−1

 ◆湖床堆積改良土現場内流用施工箇所

 ◆用途別工種図

土質試験結果報告書 不良土+まさ土+固化材の強度特性
           
土質 材令 配合量 含水比 湿潤密度 一軸圧縮強さ
  (日) (kg/m3 pt qu
      (%) (g/cm3 (kN/m2
    50 48.1  1.716 70.4
不良土 7 60 45.7  1.732 116
  70 45.0  1.723 133
まさ土   50      
(6:4) 28 60      
    70      
    50 61.5 1.620  53.2 
不良土 7 60 61.6 1.625  65.3 
  70 56.2 1.645  99.0 
まさ土   50      
(7:3) 28 60      
    70      

 

      固化材の量及び種類を改良後の使用用途別に順じて変化させれば、
      あらゆる盛土材料として蘇生することが可能であるが、経済的な視野を念頭に
      解釈すれば、以下の条件下における土質蘇生が当現場において最も望ましい形態
      ではないかと考える。
      そこでこの条件下における従来工法と自走式改良工法との単価比較を行った結果...

改良条件として
   改良土1m3あたり
      不良土・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6m3
      真砂土・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.4m3
      固化材(セメント石灰混合)・・・40kg/m3

従来工法、自走式土質改良工法の単価比較表
             
  工種 残土処理工法 単位 数量 金額 備考
実施 前処理 バックホウ 3 1 210   
    固化材 kg 90 1,170   
施工 運搬 11t車(8km) 3 1 1,000   
    バックホウ 3 1 195   
  捨場処理費   3 1 1,800   
小計         4,375   
  工種 自走式土質改良工法 単位 数量 金額 備考
自走式 撹拌混合 真砂土 3 0.4 480  
土  質 前処理 バックホウ 3 1 210  
改  良 撹拌 自走式土質改良機 3 1 780  
工  法 固化材 kg 40 880 1tフレコン当り¥22,000
  雑費     150 建設物価2月299ページ
小計         2,500   

      ※以上の結果から湖床堆積土も現場内で有効利用が可能となり
       経済的にも従来方法に比べて約40%前後削減できるものと考えられる。

◆湖床堆積土現場施工イメージ
 

2) 鞘土、刃金土
      現況の鞘土及び刃金土をサンプリングし土質試験を行った結果(後述の表−1参照)、
      鞘土・刃金土としてそのまま流用することはコーン指数qc=3kgf/cm2以下であり、
      施工上のトラフィカビリティに難点をきたすばかりでなく、出来上がり品質にも影響を及ぼすと考えられる。
      そのため土質改良による配合設計を行い分析した結果(後述の表−3参照)、
      土の締固めにおける施工上最大に影響する含水比の低減(Wo=33→27%)が可能であり、
      コーン指数もqc>12kgf/cm2と、ダンプトラックが走行可能な状態にある。
      又、コア材として流用可能な条件でもある透水係数はh=1.10×10-7cm/Sの値を得ており、
      十分満足するものであった。
      従来工法では刃金土(コア材)は、特定の山及び発注者の指定する場所より購入土として
      現場に搬入していたが、自走式土質改良機が開発されたことにより、鞘土、及びコア材を
      外部より購入することなく、現場内にて目的用途に合った改良土による提供が可能となった。

      ※具体的改良内容については次の通りである。

改良条件として
   改良土1m3あたり
      鞘土・刃金・・・・・・・・・・・・・・・・1.0m3
      固化材(セメント石灰混合)・・・30kg/m3

◆鞘土・刃金土現場施工イメージ

鞘土・刃金土 従来工法、自走式土質改良工法の単価比較表
           
  工種 従来工法 単位 数量 金額
実施 掘削 バックホウ 3 1 210 
  運搬 11t車 3 1 1,000 
施工 捨場処理費 11t車 3 1 1,800 
  購入土   3 1 2,300 
小計         5,310 
  工種 自走式土質改良工法 単位 数量 金額
自走式 掘削 バックホウ 3 1 210
土  質 現場内運搬 特殊車輌 3 1 300
改  良 前処理 バックホウ 3 1 195
工  法 撹拌 自走式土質改良機 3 40 780
  固化材 kg 30 660
  雑費     150
小計         2,295 

      ※以上の結果から鞘土、刃金土も現場内で有効利用が可能となり
       経済的にも従来方法に比べて約50%前後削減できるものと考えられる。

3) 六価クロム溶出試験について
      去る平成12年4月1日よりセメント及びセメント系固化材を使用した改良土から、
      条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超える濃度で溶出する恐れがあるため、
      セメント及びセメント系固化材を地盤改良に使用する場合、現地土壌と使用予定の
      固化材による六価クロム溶出試験実施し、土地環境基準を勘案して必要に応じて
      適切な処置を講じることが義務付けられました。

      @試験個数

       1)改良土量が5,000m3以上の場合
           改良土1,000m3に1回程度(1検体程度)とする。

       2)改良土量が1,000m3以上5,000m3未満の場合
           1工事当り3回程度(合計3検体程度)

       3)改良土量が1,000m3に満たない工事の場合
           1工事当り1回程度(合計1検体程度)

      A試験方法

       1)フレーム原子吸光法

       2)電気加熱原子吸光法

       3)ICP発光分析法

       4)ICP質量分析法

      B六価クロムの土壌環境基準

       六価クロムの土壌環境基準は、土壌からの浸透水が地下水を汚染しないという
       観点で設定されているため、公共用水域の水質環境基準と同様、
       0.05mg/リットルと定められている。
 

4) 自走式土質改良機における施工

         自走式土質改良工法による現場発生土改良は、各々の現場で
          リサイクルできる工法であり、処分費や輸送費、購入土等が不要で
         大幅なコストダウンを実現するとともに固化材と均等に混合できるため
         品質も安定している。
         将来的に今後、増えつづける発生土を施工用途に合った土に蘇生し
         元にもどすことにより、土のリサイクルシステムが完成されていくもので
         あると考えます。
 

5) 土質試験結果一覧表
表−1 土質試験結果報告書 未処理土の特性値  
               
  土粒子の密度 含水比 粒度組成 (%) コーン指数
土質 ps         qc
  (g/cm3  (%) 礫分 砂分 シルト分 粘土分 (kN/m2 
湖床堆積土 2.575 164.9 0 7.1 72.3 20.6 127
(不良土)              
鞘土・刃金土 2.667 32.7 4.9 22.8 48.0  24.3 284
(良質土)              
砂質土 2.663 8.2 37.4 51.0  5.6 6.0  1200以上
(まさ土)              

表−2 土質試験結果報告書 不良土+まさ土+固化材の強度特性
           
土質 材令 配合量 含水比 湿潤密度 一軸圧縮強さ
  (日)   pt qu
    (kg/m3 (%) (g/cm3 (kN/m2
    50 48.1  1.716  70.4 
不良土 7 60 45.7  1.732  116.0 
  70 45.0  1.723  133.0 
まさ土   50 47.4  1.705  83.1 
(6:4) 28 60 43.8  1.729  135.0 
    70 46.6  1.720  158.0 
    50 61.5  1.620  53.2 
不良土 7 60 61.6  1.625  65.3 
  70 56.2  1.645  99.0 
まさ土   50 60.6  1.655  61.8 
(7:3) 28 60 59.3  1.648  80.7 
    70 56.5  1.653  130.0 

表−3 土質試験結果報告書 良質土+固化材・良質土+まさ土+固化材の強度特性
           
土質 材令 配合量 含水比 コーン指数 一軸圧縮強さ
  (日)   qc
    (kg/m3 (%) (kN/m2 (cm/s)
    30 27.3  1957以上 3.35×10-7
  3 40 27.2  2164以上 1.10×10-7
    50 26.9  2244以上 6.49×10-8
    60 26.4  貫入不能
    20 19.2  2105以上 2.02×10-7
  3 30 19.1  貫入不能 1.04×10-7
    40 18.9  貫入不能 7.33×10-8
    20 21.2  2095以上 1.08×10-7
  3 30 21.1  貫入不能 8.45×10-8
    40 20.2  貫入不能 5.87×10-8